映画「ラ・ラ・ランド」の衝撃 2021/2/8

こんなにもエンディングがショックな映画がいまだかつてあっただろうか?

これはハリウッドのミュージカル映画であり、シニカルなゴダールのフランス映画でも、B級日本映画でもない。

ムービックスさいたまで最近は少し前の佳作をリバイバルで上映されており、「ラ・ラ・ランド」も、そんな映画の1つで、まぁ、おもしろそうだな、と思ってはいたが、わざわざ見に行くほどではないかな。と思っていたところ、YouTubeで本田真凛の演技を見ていたら、昨シーズンのフリーの曲目が映画「ラ・ラ・ランド」のサントラで踊っていた。「自分が大好きな映画で自らこの曲で滑りたいとリクエストした」とのこと。

これは、Amazonプライムでも見られるが、映画館で見なくては。と思い、映画館へ。

映画は素晴らしい。一つ一つのシーンも凝っていて、どんな場面も絵になる。以外にも本格的なミュージカルシーンは冒頭の高速道路でのシーンだけで、後は、主役の恋人同士である2人のシーンでのミュージカルシーンだけだ。

予算の関係かもしれない。

それに、自分はあまりハリウッド映画を見ないので知らないが、主役の二人はラブロマンス映画に打ってつけの風貌で、どーみても人気がありそうだ。

そんな二人のミュージカルシーンなので、ダンスは特に稚拙であるが、映画はそれで充分であり、そこが良い。

2人が愛を確かめ合う展望台でのミュージカルシーンは、映画の前半にもかかわらず感動して涙が出てきた。

映画「キャッツ」も見たが、そこまで本格的なものは、誰も望んではいないのだ。

そんな、素晴らしい映画なのに、なぜに、あのラストなのだろうか。

自分は普段、映画館でエンドロールになると、最後まで見ないで席を立つのだが、今回は、一度席を立って出口に向かったところで、あまりのショックな気持ちの中「いや、待てよ、賞を総なめにしたハリウッド映画で、こんなにショックなラストの訳がない。エンドロールが終わったところで、もう一幕あるに違いない」と思い、出口付近に座りなおして最後まで見たけれど、何もなかった。

確かに、初めからスコット・フィッツジェラルドの小説みたいな話なわけだったんですよ。

ヒロインのエマ・ストーンは女優になりたくて、ハリウッド撮影所内のカフェで働いてチャンスを伺っている。フィッツジェラルドの「ラストタイクーン」のヒロインと全く同じ設定だ。よく知らないが、アメリカで女優を目指す=ハリウッドりカフェ、って一般的な設定なのだろうか?

それで最後のシーンも、元恋人が名付けた店名で店を開き、別れた恋人の来店を待つとか、まさに「華麗なるギャツビー」なのですよ。

それで、フィッツジェラルドの数々の小説の典型的なパターンのように、最後は主人公の悲劇で終わる。

フィッツジェラルドに登場する典型的なヒロイン役そのままに、ルックスが魅力的で、彼女自身もそれがわかっていて、男を手玉に取る寂しがり屋な女性、そのままなのだ。

そう考えると、ある意味基本路線から外れているようなバットエンドであるけれど、フィッツジェラルドが作り上げたアメリカの価値観、そのもののラストなのかもしれない。

しかし、それにしても、小説ではそんな悲劇も受け入れる準備はできていたのだが、ハリウッド映画で、そんな悲劇に出会ってしまうとは。

まだ、ショックです。自分は。